OSINT(オープンソース・インテリジェンス)は、一般に公開され誰でも利用可能な情報から、必要な情報を収集する手法を指します。軍事やセキュリティ分野だけでなく、財務データや広報データをもとにサプライチェーンの分析を行う企業が出てくるなど、ビジネス分野でもOSINTの活用が進んでいます。オシンテックはRuleWatcherを通じ、環境、社会、ガバナンスといったESG分野でのOSINT活用を推進しています。
今回、株式会社リコーの山河 孝輔さん、高橋 斗美子さんにお話をお聞きしました。
山河 孝輔さん コピー機/プリンタ―開発部門に所属し、約12年間原価企画業務を担当。その後、タイでの購買業務を経て、帰任後より新規事業の購買業務を担当。現在はインクジェット印刷電池、脳磁計/脊磁計テーマを担当。
高橋 斗美子さん 研究開発部門に所属し、コピー機機構制御や計測装置のシステム制御開発、環境負荷評価技術開発などを担当。現在は新規事業の環境負荷評価・戦略など環境面を担当。
リコーはヨーロッパ基準で仕事をしている
小田:御社はヨーロッパ向けの輸出が早かったですよね。そのため、日本では要求されないような高い水準の環境対応をされてきたと思うんです。
山河:はい。例えば、ライフサイクル全体の環境負荷を定量的に評価するライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)への取り組みも早かったです。製品を作って使うところだけ見るのではなく、材料を作るところから破棄するところまで総合的に評価する仕組みを取り入れています。
小田:高橋さんが担当をされている分野ですね。私が知る限りLCAに担当を置く企業はなかなかなく、いろんな企業の方のお話を聞く中で、いかに少ないかっていうのを感じています。このように高い水準を要求され、いち早く対応していく中で、環境への意識や取り組みが、企業のブランド、カルチャーになっていると感じています。
LCAを通じてより環境にいい製品へ
高橋:そうですね。私は環境担当の中で、主にLCAといった環境負荷を算出する手段などを担当しています。製品を構成している部品や原料を含めて自分たちの製品がどの程度の環境負荷をだしているかを計算し、実際の製造の中で負荷を削減し、改善していくことに使われます。従来の製品と比較して、より環境にいい製品に改善していこうと取り組んでいます。
小田:山河さんは、新規事業の中で購買業務を担当されていますよね。
山河:はい、今は新規事業の購買業務に携わっています。いくつかのテーマで新規事業を行っていますが、環境規制の観点から国内外の規制に関する情報やトレンドを集めています。テーマによっては、国内販売するもの、海外展開するものがあるのですが、前もって国内外の情報を把握しておき、このまま開発を進めてよいのか、販売する地域によって材料を替える必要があるのかを検討する材料としていければと思っています。
小田:日本と海外では規制が大きく異なることがあるので、特に海外展開の時には、注意が必要ですよね。
山河:そうですね、ヨーロッパやアメリカと日本国内とでは環境規制の基準が大きく異なります。
以前コピー機の部品購買業務に携わっていましたが、全世界に販売していたので、さまざまな環境基準に適合できるような部品選定をする必要がありました。
一方、新規事業の場合、国内販売からスタートして、次に海外販売を考えることがあります。その際、そのままの仕様でいいのか、変更する必要があるのかをケアしなければなりません。部品は大丈夫か、仕入先は同じで良いのかなど、考えることが多くあります。また、規制の内容も日々変わっていきますので、できるだけ対応できるよう情報収集は欠かせません。
日々、更新される規制のトレンドに追いつく
小田:各国の規制に合わせて進めるため、日本の情報も重要ですが、欧米などの情報も得ていくのはとても重要ですよね。
高橋:どちらも大切になってきますよね。国内の情報は探しやすいのですが、海外の情報となるとしらみつぶしに探すのも大変なので、RuleWatcherを利用しています。
「PLAiR(プレアー)」という生分解性をもつPLA(ポリ乳酸)などを原料にした発泡シートに関して、外国のどのような規制やトレンドと関係してくるのか、グローバルな視点でどのように貢献できるのかといったことを調べたくて利用していました。
高橋:PLAiRはほぼ100%植物由来なのですが、それでも考える余地があると思います。例えば、可食非可食のトレンドです。PLAiRの原料は飼料用とうもろこし由来のでんぷん・糖なのですが、食料システムの捉え方によっては、将来的に原料についても検討が必要になる可能性があると考えています。 ちょうど、RuleWatcherに新たに「Food System」のカテゴリが追加されたので、アラートメールを設定しチェックしたり、関連する情報を見るようにしています。
小田:おっしゃる通り、食料システムは今後、見ていかなければいけない分野ですよね。また、1つの製品でも気候変動分野と食料システム分野など、見なければならない分野が広がり、横断していると感じています。
先頭を走る企業だからこそ、常に新しい情報が必要
高橋:新たに規制がこうなりそうだというのが、早い段階で見えるのが良いですね。例えば、先ほどの可食非可食もそうです。最初は、カーボンニュートラルが環境によいということでPLAiRのような素材が生まれ、次に可食か非可食かという新たな議論が生まれる。次にどのような規制のトレンドが生まれそうかを知ることで、今まで見ていた分野以外でなにをチェックする必要があるかが見えてきます。
小田:それは興味深い話ですね。お話を聞いていると、新しい製品を作ろうとした時に「性能がいい」「役に立つ」といった利便性だけでなくて、各国が定めるルールに沿ってきちんと作っていく必要があるわけですよね。そうとう難易度が上がってらっしゃるんだろうなと。
山河:そうですね。コピー機の場合、数十年で積み上げてきたものがすでにあり、新しい規制への対応を考えていけば良いのですが、新規事業はコピー機で培ったものをベースとして新規事業の製品特性に沿った対応をしていこうとしています。
小田:「どういう調達をするか」というルール作りを進めているわけですね。
山河:はい。コピー機の場合ですと、すでに仕入先の選定標準がありますが、新規事業はまた別で標準を作成しています。海外の規制の情報を早くに取り入れ、新規事業として守ること、追加が必要なことをとりまとめて、選定標準をしっかりと構築していこうと思っています。
小田:ありがとうございます
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